異常学園~アビリティエ~ #1-0
#1-0「異常学園(ことつねがくえん)へようこそ」
どこにでもあるような風貌の高校・異常学園
そこへ一人の少女がうきうきと歩いてゆく―
「ルンッルンッルンッ♪…着いた!」
彼女の名前は江西 因(えにし ゆかり)。今日から異常学園へと転校するのだ。
というのも、異常学園の校長が「彼女には素質がある」と因の母校に転校を要請したからである。ちなみに彼女はその事を詳しく聞かされていない。
「ここが新しい学校かあ…わくわくしちゃうなぁ」
そこまで立派な校舎でもないのに興奮と緊張が抑えられない因。
校舎の前で目を輝かせながら門をくぐると、突然上から声が聞こえた。
「異常学園へようこそ…あなたが因ちゃんね?」
「!」
どこからかの唐突な呼びかけに因はビクリと肩を縮こませる。
「だ、誰っ!?」
声のした方向を見上げると、校舎玄関の屋根に長髪の少女が座っていた。ここの制服を着ている所を見ると、たぶんここの生徒だろう。
「こんにちは因ちゃん、私のことはさやかちゃんって呼んでね」
「さやか…ちゃん?」
「そう。爽やかだから、さやかちゃん」
見知らぬ人を前に戸惑う因に、『さやかちゃん』を名乗る女は意味のわからない解説をしていた。
「えっと…さ、さやか、ちゃんは…どうして、あたしの名前を?」
どもりながら疑問を問う因に『さやかちゃん』はニコリと微笑み、スタリと屋根から降りた。ただ、降りるというよりも、降り立ったと言い直したほうが的確であろうほど、彼女の着地は可憐であった。
「今日からここに転校してくるんでしょう?校長から聞いたわよ?」
着地後、間をあけずに話を進める『さやかちゃん』。因はその早さにかすかな気味悪さを感じたが、それよりも彼女がここの校長に自分の事を聞いていたということに少し驚いた。
「校長?」
「ええ、私はうちの校長と仲が良くてね、あなたの学校案内も任されてるのよ?」
そうだったのか。ならばと少し安心した因。すると因の手を彼女がいきなり掴む。そしてすかさず引っ張るように走り出した。
「ほら急いで、早くしないとチャイム鳴っちゃうよ?」
「えぇ!?うわっ!もうこんな時間!!」
因は時間を見て驚き、急ぎ足で校舎の中へと入った。
「あたしは先に職員室に行かなきゃだからまたね!さやかちゃん!」
そう言い残し、因は職員室へと向かう。
これが、二人の異常な学校生活の始まりだった…
続。